米屋地獄



 新婚一年経過…同性同士の婚姻も一応認められるようになったとはいえまだまだ日が浅く、旦那様の職業的立場からすると、なにやらちょっと難ありらしいので、入籍はしたけど夫婦別姓…なので、遠藤金融代表取締役社長と結婚してもカイジは伊藤開司である。

 最初、遠藤所有のそこそこ高級なマンションに住んでいたが、根が貧乏性のカイジにその住まいは居心地が悪かったらしく、元のマンションは税金対策で所有はしているものの、築年数がかなり経過しているため家賃がかなり安い団地に移り住んでいた。 



 はてさて…



 今日は定時で帰るから…と、久しぶりに帰るコールされて、カイジは困っていた。

 定時で帰ってくる=家でメシを食う。

 普通ならそれはいい…というか、ちょっとうれしい…ハズなのに、カイジはむちゃくちゃ困っていた。

「言えない…いつものスーパーの隣に新装開店のパチ屋がオープンしてて、今日のメシの材料代はおろか、今月の生活費もそこで全部すっちまったなんて…」

新婚半年くらいで、やっぱり同じようなことをしてしまい、きつい折檻を受けたのち、ともかく金に携わるものすべて没収。その月は遠藤がいやいやながら自分の会社名義のカードで、帰宅時に食材やらなにやらを購入し、なんとかしのいだものの、どう見ても私用の利用明細なのに、『雑費』だの『福利厚生費』だのの理由をつけて強引に経費で落としたため、社員に白い目で見られるわ、仕事上の付き合いに行けないくらいならまだしも、接待に行けなくて取引先を怒らせるわで、とうとう遠藤が音を上げて、二度とこんなことをするなと、しぶしぶカイジに家計を再度預けたのだが、この始末。

給料日からわずか1週間経過にしてそれである。あと3週間、どうするつもりだ?

カイジの手料理を楽しみにしてる(と思われる)旦那様に出せるものと言えば、炊き立てご飯と納豆と玉子…味噌はあるがみそ汁にするための具がない。ついでにビールは買い置きがあるが、つまみがない。

「ああ…なんて俺はダメな男なんだ…」

まったくだ。

…ごまかす…いや、少しでもご機嫌をとる方法は…

「………色仕掛けかなぁ…でもそれって実質売春行為じゃ…」

結婚とは、某女史に言わせると『合法的売春行為』らしいが、男同士の婚姻関係で片方が完全主夫状態でも、ヒステリックにわめきたてる対象となるのか?ちょっと聞いてみたい気もするが、この場合、残り三週間もあるのに生活費をギャンブルで使い切る方が完全に悪い。もし旦那様が、外で新妻に言えない類のお楽しみに使えるだけのへそくりを持ってるなら、外のお楽しみレベルの娯楽を提供して、へそくりを生活費に充てていただいたほうが、お互いのダメージはまだ少ない(かもしれない)。

ともかく新妻カイジは色仕掛けの方向で行くことに決めた。


「これでいいかな?」

ピンクのふりふりエプロンは、結婚してすぐに旦那様からプレゼントされた。その後、コスプレ好きなのか、セクシーメイド風だのやっぱりふりふりエプロン系をやたら贈られたが、どうしてもエプロンをつけるなら、シンプルじゃなきゃ嫌なカイジは、一度も身に着けたことはない。

でも、今日は色仕掛けである。

『ご飯にする?お風呂にする?それとも俺?』…というより、『俺にする?俺にする?それとも俺?』(風呂はあるが事後にしたいので、すぐに準備できるのは『俺』しかない)…

やっぱ、初めてもらったのを着ける方がポイントは高い…かな?それにしても…

畳にベタ座りで、無駄なこととは知りながら、必死で短いフリルの裾を引っ張る。自分で決めたこととはいえ、裸エプロン…やっぱり恥ずかしい。

ピンポーン

来たっ。

(基本的に内側から鍵をかけてるので、遠藤は帰宅時、呼び鈴を鳴らず習慣がついている。)

時間的にも丁度いいので、カイジはパタパタとスリッパを鳴らして、玄関に駆け寄ると、ドアスコープも見ずに、ドアを開けてしまった。

「まいどっ、米屋の佐原でーす。御用聞きに……えっ?」

「あ…」

ドアの外にいたのは少々(?)額の生え際が後退した旦那様ではなく、金髪の若い米屋。

カイジは赤くなる前に青ざめて、慌ててドアを閉めようとするが、米屋は強引に玄関内に入り込む。派手な音を立てて、ドアが閉まった。

「…や…やだ、出てけよっ」

別にお互い男同士、市民権を得たとはいえ、同性に欲情しないタイプの男の方が圧倒的に多い…ので、別に夏場にトランクス一丁でうろうろしてようが、その状態でうっかり荷物の受け取りに出たとしても、女性の配達員ならともかく、男性だったら失笑で済ませられるが…絶対特定のお一人様以外には見せられない、裸エプロン…ある意味男の夢そのものの恰好の意図は明白。

華奢な肉体を覆うのは、フリルで彩られたこころもとない布一枚…なにやら目のやり場に困る扇情的なその姿を、米屋は足元から太腿、なだらかに、だが引き締まったヒップラインと、視線で犯してゆく。

思わず胸元をかき合わせ、あとずさったその瞬間、バランスを崩し、カイジは尻餅をついた。

それを逃す米屋ではない。盛りのついたけだものそのままに、カイジを押し倒す。

身をよじり、這うようにしてその腕の中から逃れようとするカイジだったが、日頃伊達に米の搬送、上げ下ろしはしていない米屋の、しなやかな筋肉には勝てなかった。あがくカイジを冷たい床に押さえつけ、片手で剥きだしの尻を揉む。

「いっ…やだっ…やめろっ」

「なに言ってんだよ、誘ってんのはそっちだろ?奥さん。そんないやらしいカッコして…」

言いながら、はちきれんばかりになっているジーンズの前を開け、今にも…というところで

ピンポーン

「旦那が帰ってきたっ、あんた、ただじゃ済まないからな」

「うそだろ、いっつも帰り遅いくせに…」

裸エプロンは想定外でも、下調べ済みで計画的にやってきたらしい米屋である。ただ、ここは五階で高所恐怖症の自分としては、ベランダから逃げるのもイヤだし、確か鍵は掛けた…どうせ見つかるなら、せめて一発くらい想いは遂げようと覚悟を決めたそのとき、内部の異変を察したのか、ドアノブが回り、ガチャリと扉が開いた。

げっ…と、思う米屋、助かったと思うカイジ………そして、目の前の展開に、思わず咥えタバコをポロリと落とす遠藤…

何を思ったのか、遠藤、パタンとドアを閉じてしまった。

残された二人、一瞬何が起こったかわからず、ポカン…

「ばか、なに、なんだよ、助けろよ、遠藤っ」

「旦那もそんな野暮じゃないってことさ。ご好意に甘えて奥さんも楽しもうよ」

「いっ…いやぁーっ」

さて、今度こそ挿入…というところで、脳天にがつん。佐原の世界は暗転した。


ぐずぐずという泣いてるんだかなんなんだかの音がする。

やけに頭がズキズキして、俺、そういえばどうしたんだったけなぁ?と少し考え、思い出したのは白い尻とその弾力。

て、ことは、俺もしかして、あの旦那にとっ掴まって?

目を開けると暗く…蛍光灯がついていない代わりにテレビがついている。

バラエティ番組はけたたましく中身のない笑い声を立てているが、テレビを照明代わりに、ぼんやり浮かび上がるシルエットの二人は、その笑い声につられるようなこともない。

がたいのいい男は仕事帰りの姿のままで胡坐をかいて座り、細い裸体にエプロンだけを巻いた、米屋の横恋慕した相手は、男の股間に顔をうずめている。

「人が苦労して働いて養ってるのに、帰ってみりゃメシのしたくはないわ、男は連れ込んでるわ、今月分の生活費そっくり落としただわ…落としたのはどうせ、パチンコ屋だろうがっ!!」

自分のそれを必死でしゃぶるその頭を引き剥がして、ぴしゃりを頬を叩く。

ごめんなさいと、カイジが泣いた。

「許してやれよ、旦那」

良識が欠如しているとはいえ、米屋は本気で奥方に惚れていたようである。生活費のことは知らぬが、折檻の原因の半分は自分のことのようだ。自分は何をされてもいいから、ともかくカイジをひどい目に合わせるのはやめて欲しかった。

「…お前の客がなにか言ってるぞ?」

カイジは答えない。

またも遠藤に頬を張られ、勢い余ってカイジは畳の上に倒れこむ。

助け起こそうと駆け寄りたい米屋だが、なにやら体が動かない…

「げっ…」

自分の有り様に思わず声を上げて驚く米屋である。胡坐をかいた状態で、両手首が両足首に固定されている。今まで気づかなかった方もどうかと思うが、なにやら結び目がやけに専門的なのもいかがなものか…

遠藤は面白くなさそうに、グラスにビールを注いだ。

カイジは許しを請うように、また遠藤の中心に顔をうずめる。

「お前はご主人様にろくなメシも食わせないで、自分だけ動物性たんぱく質を補給するつもりか?酒の肴も出せないんなら、何か面白いことをしろっ!」

困惑顔のカイジを前に、遠藤はくちびるを舐め、にやりと笑い…米屋に一瞥をくれる。まなざしの冷たさに米屋は背筋が凍った。

遠藤はカイジの耳元に何事か囁くと、手伝ってやると、カイジのそれに無骨な手を這わせる。

何度かしごくと、もともと遠藤のそれを口に含んでいた段階で頭をもたげていたそれは、完全に屹立した。

慎重に獲物を狙う猫のようにカイジは米屋の下に進む。

「悪いな…遠藤さんの命令だから。でも…でもあんたが絶対的に悪いんだしっ」

米屋はひっくり返されて、誰にも晒したことのない部分をあらわにされ…自分が何をされようとしているのか悟る。

「やめてくれっ、もう二度としないから…ってゆーか、俺、まだ突っ込んでねぇのにっ!!」

米屋は若奥様の可憐なモノで散らされた。



教訓:玄関を開けるときは必ず誰が表にいるのか確認してから開けましょう。








おまけ

若奥様地獄



思わず胸元をかき合わせ、あとずさったその瞬間、バランスを崩し、カイジは尻餅をついた。

それを逃す米屋ではない。盛りのついたけだものそのままに、カイジを押し倒す。

(中略)

「いっ…やだっ…やめろっ」

「なに言ってんだよ、誘ってんのはそっちだろ?奥さん。そんないやらしいカッコして…」

言いながら、はちきれんばかりになっているジーンズの前を開け、今にも…というところで

ピンポーン

チャイムの音と共に今度はドアノブが回り…

「なに、またかよっ…つーか、今度は鍵閉めたはずなのに、なんでっ」

あまりに興奮していて鍵、ちゃんとかかってなかったみたいです。

「奥さん、まいどおおきに。酒屋の船井……おやまぁ、えらい楽しそうなことを」

「チッ」

「酒屋さんか?よかった、助け…」

「残念やなぁ、奥さん。こんな絶好の機会逃すあほは、おらんて」

「なっ…なにっ」

「米屋さんも、独り占めはあかん。一番は譲ったるが、かわりばんこや。奥さんも旦那に知られたくなかったら、協力した方がええで?」

「やだっ…やめろっ…お前ら、お前らそれでも人間かっ!?」

そんな内部のやり取りを知ってか知らずか

「どうも〜クリーニング屋の北見で……って、ありゃ」

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あ〜あ、帰るって連絡した後で、利根川さんに掴まっちまったよ。しかも、散々足止め食らわせたあげく、『奥さんを見てみたい』とか言い出すし……急な来客で怒るかなぁ、カイジ。

ただ、恩人であり、今は取引先の大幹部である利根川を無下には出来ない遠藤、自慢のBMWを団地から歩いて15分の駐車場にとめて、利根川の話に適当に相槌を打ちながら、とぼとぼ帰宅。

チャイムを鳴らすが、件の若奥様は出てくる様子もなく、だが、なにやら人の気配はするので、ノブを回してみれば回る。なんだいるのかと、利根川に「むさくるしいところですが」と言いつつ開けてみれば、カイジはえらいことになっていた。

あまりのことに遠藤がドアを閉めようとしたが、その前に利根川が「ほほう」と言いながら入ってしまう。どこぞのジジイが乗り移ったかのように、食いつきがいい。

「いい奥さんじゃないか、遠藤君。だが、ここまでの大人数に混ざるのはちょっと気がひける。今度は私と奥さんと君の三人でセッティングしてくれたまえ」

「…は…はぁ…」

遠藤のしぶしぶながらの肯定の返事に、米屋の太いもので口をふさがれていたカイジが、むぅむぅ言いながら目で抗議したが、そんな目されてもなぁ…と、遠藤はその場にへたり込む。

泣きたいのはこっちだ、まったく。



教訓:鍵はちゃんと掛けましょう。








Sだやさんのところの字茶で話題になった米屋…書きたくなったのでつい…(茶とは流れがずれてますが、まぁそのへんは、同じ枝から別の話を作りたがるひねくれものなので…)

遊んでくださった皆様、ありがとうございました!